今回は、なぜあなたは、無理をしたり、我慢したり、自分を作ってまで「いい人」を続けてしまうのか。そのメカニズムと、意思の力で強制しなくても自然といい人をやめる方法について解説します。
実際には”いい人”をやめるということではなく、”無理にいい人を演じてしまう”ことをやめるということです。
無理に人に合わせるということも同じだと言えます。
いい人を演じることで起こる弊害
他人にとって都合がよいだけの人になってしまう
いい人とは、他人にとって都合のいい人です。
意見や文句を言ってこない、断らずに何でもやってくれる、付き合ってくれる、話を聞いてくれる、何でも共感して受け入れてもらえる
それにつけ込んでくる人に、理不尽な要求をされたり、いろいろ頼み事をされたり、YESマンで相手が居心地がよい、ストレスのはけ口や自己承認欲求を満たす、都合がよいだけの人になってしまったりします。
深い人間関係が築けない、本当の自分を分かってもらえない
人が寄ってきたとしても、それはいい人を演じているあなたが好きだったり、都合がいいから寄ってきているであって、本当のあなたが好かれているわけではないのです。本当の自分を隠しているから当然のことですね。それも自分では分かっています。
他人取っても、いつも人に合わせている、自分の気持ちや考えや意見を言わない、本来の自分を隠して自分がない、相手にとってもこの人と深く付き合おと思ったり、魅力を感じなくなってしまいます。
他人は、いい人、都合が良い人だから側に寄ってきているだけで、本当に信頼、尊敬、愛されることはないのです。
自分はなんでこんなに相手に色々してあげてるのに、相手はなぜ認めてくれないんだ、何も返してくれないんだと不満を持ってしまったりします。
自分を作っているので苦痛を感じたり疲れてしまう
いい人でいようとするあまり、他人の言いなりになったり、意見や言いたいことを言えなかったり、断れなかったり、本当の自分の気持ちを押し殺して、我慢をしてしまいます。
人は本当の自分を隠して、偽って、無理に演じたり、我慢していると苦痛を感じるようにできています。
自分の本当の気持ちを分かってもらえない、受け入れてもらえないという苦しみを感じる
いい人を演じていると、本当の自分が人から好かれる事もないし、分かってもらえません。本当の自分を隠しているのですから当然のことです。
「○○さんはいつも明るくてニコニコしてていいよね」って言われても、本当は自分もそんなんじゃないのに10本当の自分を分かってもらえないという不満が強くなってしまいます。
自分の時間、労力が奪われ、自分の気持ちや時間を大切にできない
他人と合わせたり、なんでも頼み事やお願いを断れなかったりして、本当は違うことをしたいのに、相手に合わせ、自分の時間や労力などが奪われてしまったりします。
自分の好きなことができないので、自分の本当の気持ちに関することなので、それにより苦痛を感じてしまったりします。
いい人を演じてしまう原因
なぜ、いい人演じてしまうのかというと、いい人でいないと不都合なことが起こるという信念を持っており、心の奥底で恐れているからです。
いい人でいないと…
人から嫌われる
人が去っていく
人に怒られる
人を傷つけたり嫌な気持ちにさせるのではないか
仲間外れにされる
変な目でみられる
否定、批判される
友達ができない
誰にも相手にされなくなる
孤独になってしまう
人から好かれない
愛されない
いい人を演じてないとこのようなことが起こるのではと恐れているわけです。
では、その恐れはどこから来ているのでしょうか。
それは過去の体験により、自己否定、劣等感、不信感、無価値感などの信念を持ってしまっているからです。
劣等感や自己否定が強く自分に自信がないから、素の自分を出したり意見を言ったりしたら、人から嫌われる、否定される、怒らせてしまうのではないかと恐れてしまうのです。
また、「自分は価値がない人間だ」という信念を持っていると「自分は価値がないから、いい人(価値がある人)にならないといけない」と無理に頑張ってしまう場合もあります。
ありのままの本当の自分では、他人から嫌われるだろう、受け入れてもらえないだろう、怒らせてしまうだろう、仲間はずれにされるだろう、というような信じ込みがあるわけです。
よくあるいい人をやめる方法や考え方として
嫌われる勇気を持とう
全ての人から好かれる人なんていない
他人より自分を優先しよう
自分の意見や言いたいことを言おう
などがありますが、原因をそのままにしたままで実践しようとしても、人から嫌われたくない、仲間外れにされたくないといった、恐怖心がブレーキになって実践することができないのです。
心理的なブレーキをかけたままで無理に実践して人に言いたいことを言っても、後から嫌な人と思われているのではないか、相手を傷つけてしまったのではないか、嫌われたのではないかと頭を巡り、かえってストレスになってしまうのです。
まずいい人演じざるを得ない原因となっているブレーキを外す必要があります。言われなくても、意識しなくても自然とできるようになります。
嫌われたらどうしようといった恐怖心がなくなりますので、自然とありのままの自分で対等な人間関係を築いていくことができるようになってきます。
自分はダメだ、ありのままでは愛されない、ありのままでは人に受けられてもらえない、認めてもらえない、人から好かれない、魅力がないといった、自己否定、劣等感などの信念は、なぜどのように作られてしまったのでしょうか。
それは、過去の体験によるものです。
人は、何かの体験をすると体験に何かの意味づけをします。
ある出来事に「自分が否定された」とか否定的な意味づけをすると、自分はダメなんだ、自分が人から嫌われていると言った信念が作られます。それにより劣等感などの嫌な感情が発生します。
例:
体験
小学生の時に音読の発表してつっかえてしまい皆に笑われた
体験に対する意味づけ・信念
馬鹿にされた、自分はダメだ、自分は話すのが苦手だ
想起される感情
恥ずかしさ、劣等感
こういったものを何も手を付けず持ち続けたままでいると、大人になっても似たような場面になると、また「失敗して馬鹿にされるのでは」と反応して恐怖心で震えてしまい、何も言葉が出なくなってしまったりします。そして、苦痛を避けるために人前で話すことを避けるようになります。
いい人を演じてしまうことも全く同じ原理です。
多くの場合、大人になっても無理にいい人を演じてしまう幼少期の親の育てられ方に原因があります。
例えば、小さい頃に親から「いい子でいなきゃダメでしょ!」と叱られて育ったとします。
そうすると、嫌な気持ちになり”いい子でいないと親を怒らせる、嫌われる” という信念が作られてしまいます。
また、「いい子にいなさい」ということはどのような子どもが言われる言葉でしょうか。
いい子に対しては、「いい子にしなさい」とは言いません。つまり悪い子ですね。だから無意識に”自分は悪い子なのだ”という信念が作られてしまいます。
自分は悪い子なのだ、という自己否定により苦しみが発生します。
そして、いい子でいると親に褒められたとします。
すると”いい子でいると褒められる”という信じ込みが来られてしまいます。
そして、親を怒らせたり嫌われないように無理にいい子を演じるようになります。
この信念は、それが書き換わるほどの体験をするか、本人が納得して手放すまでは、無意識下にずっと記録されたまま、何十年でもずっと残ったままになります。
これが残ったままになっているから大人になっても、いい人をしていないと人に嫌われる、怒らせてしまう、といった恐怖や不安からいい人を演じてしまうのです。
あなたの中にある、このようないい人を演じさせてしまうような信念を特定してそれを手放していくことが大切になります。
いい人を自然にやめられるワーク
あなたがいい人演じてしまう原因となっている信念を洗い出す
自分がなぜいい人演じてしまっているのか、自分がいい人を演じている事すら気づいてないと言う人もいたりします。
まずは、自分がなぜいい人演じてしまうのか、その原因となっている信念やそれを作った体験を洗い出します。
あなたはどんな時にいい人を演じてしまうのか、その裏にはどんな不安や恐れがあるのかを探っていきます。
次の質問に、はい/いいえで答えてください。
Q1.やりたくない頼み事や何かに誘われたされたときに断れない
Q2.嫌なことをされた時にはっきりと嫌と言えない
Q3.人に何か嫌なことをされて怒りたい時に、怒らずに我慢してしまう
Q4.自分を犠牲にしてでも他人を助けてあげなければと思っている
Q5.みんなで何かを決める時に自分の意見を言えない
Q6.正当な理由があって誘いを断るときにも、罪悪感や不安を感じてしまう
Q7.自分よりも他人を優先してしまう方だ
Q8.本当の自分や本音を隠してしまう
Q9.人から何かをしてもらったら、お返しをしなければと強く感じてしまう
Q10.他人を誘うことがとても苦手だ
Q11.規則やルールはきっちりと守る
Q12.お世辞を言ってまで他人を褒める
Q13.上記の1~12以外で無理にいい人を演じてしまう体験があれば書き出して下さい
「はい」と答えた各質問に対して次のことを紙に書き出しください。
しなかった/した は内容によって変えてください。
例:
・なぜそのような行動をとっていますか?
・もし、それをしなかった(した)場合どんなことが起こると思いますか?
・もし、それをしなかった(した)自分はどんな人間だと思いますか?
・相手からどんな人間だと思われると思いますか?
・過去に実際にそう感じた時の具体的な体験を書き出して下さい。複数でも構いません。
・それを人生で1番最初に感じた体験はいつどんな体験だったかを覚えている範囲で書き出して下さい
重複する答えが出てくることもあると思いますが、信念とはななかなか知覚できないので、様々な角度から信念を洗い出すために重複してしまっても良いので答えを書き出して下さい。
・もし、それをした、(しなかった)場合どんなことが起こると思いますか?
の した、しなかった は、質問の内容によって変えてください。
Q1.やりたくない頼み事をされたときに断れない
の場合は、それをした(頼み事を断った)場合どんなことが起こるか
Q3.人に何か嫌なことをされて怒りたい時に、怒らずに我慢してしまう
の場合は、それをしなかった(他人を助けなかった)場合どんなことが起こるか
ということです。
例
Q1.やりたくない頼み事や何かに誘われたされたときに断れない
はい
・なぜそのような行動をとっていますか?
相手に嫌われたくないから
・もし、それをした(しなかった)場合どんなことが起こると思いますか?
嫌われて相手が離れていってしまう
・もし、それをした(しなかった)自分はどんな人間だと思いますか?
薄情な人
・それをした(しなかった)自分は相手からどんな人間だと思われると思いますか?
価値がない人
・過去に実際にそう感じた時の具体的な体験を書き出して下さい。複数でも構いません。
仕事を振られて、自分の仕事じゃないしやりたくないのに断れなかった
大して行きたくない場所に誘われたけど、断ったら二度と誘ってもらえなそうなので断れなかった
・それを人生で1番最初に感じた体験はいつどんな体験だったかを覚えている範囲で書き出して下さい
小学校4~5年の時に、近所のガキ大将に、無理やり付き合わされたり、命令されて、断断るといじめられるので断れなかった
質問1. あなたは、自分自身をどのような人間だと思っているから、いい人をしていますか?
質問2. もし、全くいい人を演じていない自分は、どのような人間か、自分自身をどのように思っているかを書き出して下さい。
ここまで書き出したことにより、いい人を演じてしまうことに対してあなたの持っている信念、と信念がどのよう過去のな体験がきっかけになって作られたのかがだいたい明確になってきたと思います。
次は、ワークを使ってこれらの信念を作るに至ったこの体験の記憶を処置したり信念を手放していきます。
いい人を演じてしまう原因となっている信念を手放すワーク
ワークを用いて
記憶そのものを無力化する
体験をやり直して別の記憶に書き換える
記憶に対する意味づけを変える
今の自分の視点から学びや気づきを得て記憶を消化させる
自分が納得できるやり方で記憶を処置することで、なんでもない日常の記憶のように変化して、影響力もなくなっていきます。
だから、ブレーキが外れるので、無理に意思の力でいい人やめようと思わなくても、自然と気がついたらいい人をやらなくても平気になっています。
先ほど紙に書き出した題材をもとにして、こちらのタイムラインセラピーを参考にして、あなたのしっくりくる方法で記憶を処置してください。
特定の場面の記憶が思い出せないという人や、親との関係があまりよくないとか、親からあまり愛情をもらわなかった、親から愛されている感覚がしないという人は、親との関係を見直す方法や、親との関係をやり直す方法もおこないましょう。
自己肯定の信念を養う
そして、大きな体験の記憶を処置してブレーキが弱くなって来たら、今度はプラスの方向に信念を養っていきます。
質問1で無理にいい人を演じなかった素の自分はどのような人間だと思うかというところを書き出したと思いますが、おそらく、自己否定の信じ込みが多かったと思います。
(ありのままの自分では)価値がない
(ありのままの自分では)誰も相手にしてもらえない
(ありのままの自分では)他人から好かれない、受け入れられない
(ありのままの自分は)ダメで悪悪い人間だ
そのような信じ込みがあるから、いい人を演じてしまうわけですよね。
ブレーキがある程度弱くなったところで、これを今度はプラスの方向に養っていきます。
ありのままの自分では価値がない → ありのままの自分で価値がある
このように、少しずつでも自己肯定感の信念を養っていきます。
そうすると、ありのままの自分で価値がある、ありのままの自分で素晴らしい、ありのままの自分で愛されているのだというように自己肯定があった出来るようになるので、根拠のない自信で満たされるようになり、無理に自分を作っていい人になる必要がないので、自分らしく自然体で他人と接することが出来るようになっていきます。
自己肯定感の信念を養う方法はこちらの記事を参考に実践してください。